ショーグンの洋書本棚

ゆるい洋書紹介Blogです。加筆・修正することがありますが、ご了承ください。

"Once A Runner" - 洋書34冊目

■原書

"Once A Runner" John L. Parker Jr. (Scribner, 2009) ※作品の初版は1978年

■評価

ジャンル:文学

面白さ:★★★★☆

難易度:★★★★☆

レベル:TOEIC L&R 900~ 英検1級~

所要時間:11時間

■感想

邦訳未出版の作品ですが、海外サイトを見ると必ずと言って良いほどBest Running Booksの上位に来ています。もともとは自費出版された本で、徐々に口コミが広がり人気を博すようになった作品だそうです。文体が難解で中盤までは読み進めるのが苦痛でしたが、話が進むにつれてどんどん入り込めました。

マイル走者(1.6km)のQuenton Cassidyが紆余曲折を経て、世界記録保持者のJohn Wantonに挑戦するというのが大きな話の流れです。大学での騒動がきっかけで競技会から締め出されたCassidyは、人里を離れて一人トレーニングに打ち込むことになるのですが、そのストイックな姿は『ロッキー』シリーズや『あしたのジョー』を彷彿とさせます。とても日本人受けしそうな作品なので、いつかは邦訳版が出ることを期待します。自分で翻訳するには難易度が高すぎるので💦

■一文紹介

‐ Cassidy very early on understood that a true runner ran even when he didn’t feel like it, and raced when he was supposed to, without excuses and with nothing held back. ‐(122頁)

"A Passage to India" 『インドへの道』- 洋書33冊目

■原書

"A Passage to India" E.M. Forster (Penguin Books, 2015) ※作品の初版は1924年

■翻訳版

『インドへの道』E・M・フォースター 小野寺健 訳(河出文庫、2022年)

■評価

ジャンル:文学

面白さ:★★☆☆☆

難易度:★★★★★

レベル:TOEIC L&R 950~ 英検1級~

所要時間:14時間(ネイティブスピード:6時間程度)

■感想

3年ほど前に買って挫折した本です。あれからかなり語彙も鍛えたので物語の筋くらいは楽しめるだろうと思ったのですが、結果としては全然ダメでした。読みにくい文体で物語も(個人的に)つまらくて、ほとんど頭に入ってきませんでした(とはいえ、しっかりと読了カウント)。外国人のレビューを見ても「非常に読みづらい」との声が多いので、これが読めなくてもそんなに落ち込むことはないのかなと勝手に思っています。翻訳されている故・小野寺さんも戦前生まれの大御所なので、並大抵の英語力では訳せない作品ということなのでしょう。

■一文紹介

‐ Now that I’m going, I realize it. I wish I could do something for you in return, but I see you’ve all you want. ‐(233頁)

 

"Gold Rush" - 洋書32冊目

■原書

"Gold Rush" Michael Johnson (HarperCollins Publishers, 2012)

■評価

ジャンル:スポーツ

面白さ:★★★★☆

難易度:★☆☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 700~ 英検2級~

所要時間:7.7時間

■感想

陸上界のスーパースター、マイケル・ジョンソン氏の著作です。自身の競技生活に加えて、頂点を極めたアスリートの様々なエピソードも紹介しており、「チャンピオンに必要な資質とは何か」を語りつくしています。ウサイン・ボルトイアン・ソープ、デイリー・トンプソンナディア・コマネチなど、日本人ではコンタクトを取るのが難しいと思われるビッグネームにインタビューを行っているので、スポーツファンにとってはとても面白い本だと思います。頂点に立つ人間は、常人には計り知れないレベルで心技体を備えているのだと感じました。スポーツでも勉強でもビジネスでも、No1を目指す人にお勧めの一冊。

■一文紹介

‐When I crossed the finish line in the 200 metres, I felt so many different things all at once that I’d never felt before and I’ve never felt since, even in 2000 when I won.‐(285頁)

"Surely You're Joking Mr Feynman!" 『ご冗談でしょう、ファインマンさん!』- 洋書31冊目

■原書

"Surely You're Joking Mr Feynman!" Richard P Feynman (Vintage, 2022) ※作品の初版は1985年

■翻訳版

『ご冗談でしょう、ファインマンさん!』リチャード P. ファインマン 大貫昌子 訳(岩波書店、2000年)

■評価

ジャンル:ノンフィクション

面白さ:★★★★☆

難易度:★★★☆☆

レベル:TOEIC L&R 800~ 英検準1級~

所要時間:14時間(ネイティブスピード:6時間程度)

■感想

もっと昔に読んでいれば!と思わずにはいられない一冊でした。

まず、ファインマン先生のチャーミングな人柄がとても魅力的でした。 本当に自由な精神の持ち主で、たくさんの人に愛されていたんだなと思います。いつまでも童心を忘れずに、好奇心に正直に突き進んでいく姿が、素晴らしいと感じました。

また、興味を持ったことに対して、自分で検証してみることの大切さを改めて実感しました。特に昨今は、大抵の情報は自分でわざわざ検証せずとも、インターネットで検索できます。ですが人間は「経験」から学ぶものです。本を読んで得た知識と、身をもって体験して獲得した知識では重みはまったく違うことでしょう。なにかにつけて効率性が求められる時代ですが、「結果はもう出ている」とかそんなことは考えずに、もっと気の赴くままに、興味のままに生きていくことが大切だと感じました。

子供が読んでも大人が読んでも、学ぶことがきっとたくさんある作品です。科学的な描写は若干情景がイメージしづらいですが、基本的には平易な文体ですので、何か一冊洋書を読みたい方にもおすすめです。

■一文紹介

‐ Then I had another thought: Physics disgusts me a little bit now, but I used to enjoy doing physics. Why did I enjoy it? I used to play with it. I used to do whatever I felt like doing – it didn’t have to do with whatever it was important for the development of nuclear physics, but whatever it was interesting and amusing for me to play with. ‐(169頁)

"Of Human Bondage" 『人間の絆』- 洋書30冊目

■原書

”Of Human Bondage" W. Somerset Maugham (Vintage, 2000) ※作品の初版は1915年

■翻訳版

『人間のしがらみ』モーム 河合祥一朗 訳(光文社古典新訳文庫、2022年)

『人間の絆』サマセット・モーム 金原瑞人 訳(新潮文庫、2021年)

■評価

ジャンル:文学

面白さ:★★★★☆

難易度:★★★☆☆

レベル:TOEIC L&R 850~ 英検準1級~

所要時間:32時間(ネイティブスピード:12~13時間程度)

■感想

文章はそれほど難解ではなく、感覚的には『一九八四年』と同じレベルでした。ただし、700ページもある長い小説なので、英語学習者としては読み切るのが大変でした。

長い物語でしたが、その分とても印象に残りました。内反足というコンプレックスを抱える主人公のフィリップが、人生の困難に翻弄されながらも力強く生きていくお話です。主人公の姿がわたしと重なり、感情移入せずにはいられない場面がたくさんありました。また、全体をとおして人物描写が秀逸で、リアルです。ファニー・プライスやミルドレッド・ロジャーズ、クラトンなど、主人公以外にも記憶に残るキャラクターがたくさん出てきました。

小説の面白さは、色んな人の生き方を追体験できるところだと思います。そんな小説の魅力が詰まった作品なので、時間のある方はぜひ読んでみてください。

■一文紹介

‐ He had always in the future, and the present always, always had slipped through his fingers. ‐(699頁)

"Gathering Blue" 『ギャザリング・ブルー 青を蒐める者』- 洋書29冊目

■原書

”Gathering Blue" Lois Lowry (HMH Books for Young Readers, 2000)

■翻訳版

『ギャザリング・ブルー 青を蒐める者』ルイス・ローリー 島津やよい 訳(新評論、2013年)

■評価

ジャンル:児童文学

面白さ:★★★☆☆

難易度:★★☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 700~ 英検2級~

所要時間:6時間(ネイティブスピード:4時間程度)

■感想

原始的な村が舞台のファンタジーです。

両親をなくした少女Kiraは編み物の才能を見出され、村の議事堂で生活を始める。同じく議事堂で仕事をする子供のThomasとJo、村の集落で暮らす友人Mattたちとの交流を経て、Kiraは自分が任されている仕事の意味を理解し始める……

読んでいる途中で知ったのですが、全4部作の2作目だそうです。ただし、純粋な続編というわけではないので、単体でも十分に楽しめます。とはいえ疑問が残る部分もあり、前作の”The Giver”と続編の”Messenger”、”Son”も気になります。中々面白い作品でした。

■一文紹介

‐ ”I love the blue. Thank you.” ‐(211頁)

"The Promise" - 洋書28冊目

■原書

”The Promise" Damon Galgut (Vintage, 2021)

■評価

ジャンル:文学

面白さ:★★★☆☆

難易度:★★★★☆

レベル:TOEIC L&R 850~ 英検準1級~

所要時間:11時間(ネイティブスピード:-時間程度)

■感想

2021年ブッカー賞受賞作品。「意識の流れ」を駆使した作品で、コロコロと視点が変わります。特に、葬式の場面がメインの第1章 (Ma)は登場人物が多く、誰がメインキャラクターか分からない状態で読み進めないといけません。「意識の流れ」という技法も、あとで調べて理解した次第で、初見だと頭が追い付きませんでした。また、セリフに括弧を使わないという文体も独特で、最初は面食らいました。第2章 (Pa)からは少し慣れてきたものの、気を抜くと誰の話だっけ?となってしまいました。

南アフリカ共和国の社会と、その国で生きる白人女性Amorの家族の死、そして家族と女中とのあいだで交わされたとある「約束」の物語です。全体的に暗い雰囲気のお話でした。水が流れるかのように人が次々と死んでいくところは、以前紹介した、”By The Sea”に似ていると感じました。どちらもアフリカが舞台の物語です。

■一文紹介

‐ You are what you are, even if ratness is your fate. ‐(154頁)

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