ショーグンの洋書本棚

英語学習者向けに洋書レビューをしています。予告なしで加筆・修正することがありますが、ご了承ください。

"The Sirens of Titan" 『タイタンの妖女』- 洋書43冊目

■原書

"The Sirens of Titan" Kurt Vonnegut Jr, (Gollancz, 2004) ※初版は1959年

■翻訳版

タイタンの妖女カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志

■評価

ジャンル:文学

面白さ:★★★★★

難易度:★★★☆☆

レベル:TOEIC L&R 850~ 英検準1級~

所要時間:9.8時間(ネイティブスピード:4時間程度)

■感想

大好きな作品で、翻訳版は何回も読んでいます。今回はじめて原書に挑戦しましたが、やはり日本語のようにスラスラ読むことは難しく、中盤~後半にかけてはややダレてしまいました。ヴォネガットの作品は「自由意志」を問うものが多く、本作でも人外の存在に操られる主人公たちの生涯をコミカルに描いています。それでいて、どこか悲しさも感じる、力加減がとても絶妙な作品です。

■一文紹介

‐ “It took us that long to realize that a purpose of human life, no matter who is controlling it, is to love whoever is around to be loved.” ‐(220頁)

"Shoe Dog" 『SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。』- 洋書42冊目

■原書

"Shoe Dog" Phil Knight (Simon & Schuster Ltd, 2016)

■翻訳版

『SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。』フィル・ナイト 大黒奉之 訳

■評価

ジャンル:ノンフィクション

面白さ:★★★★☆

難易度:★★☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 800~ 英検準1級~

所要時間:15時間(ネイティブスピード:7時間程度)

■感想

世界一のスポーツブランドNIKEを作った起業家、フィル・ナイト氏の自伝です。NIKEというブランドはもちろん誰でも知っていると思いますが、その歴史まで知っている人は少ないはず。読んでいて「そんな経緯があったんだ!」と驚く部分も多かったです。例えば、NIKEが日本のスポーツメーカーAsicsの代理店としてスタートしていることなんて、多くの人は聞いたこともないでしょう。面白いと思ったのは、メーカーの創業者には珍しく(?)、フィル・ナイト氏自身は技術畑の人ではないんですね。製造業であれば、最初は開発者からスタートして、会社が大きくなるにつれて経営に軸足を移す人が多いように思うので意外でした。会計畑出身であることや、控えめな性格であること、またスポーツ選手としては凡庸であったことなど、自分と重なる部分も多かったのでとても楽しんで読むことができました。五つ星にしようか迷うくらい面白い作品でした。

■一文紹介

‐ I wanted to leave a mark on the world. ‐(3頁)

"Bec (The Demonata)"『デモナータ 4幕 BEC(ベック)』- 洋書41冊目

■原書

"Bec (The Demonata)" Darren Shan (HarperCollins, 2007)

■翻訳版

デモナータ 4幕 BEC(ベック)』ダレン・シャン 橋本恵 訳

■評価

ジャンル:児童文学

面白さ:★★★★☆

難易度:★☆☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 700~ 英検2級~

所要時間:8時間

■感想

子供のころ読んでいた児童文学の原書に挑戦しました。『デモナータ』シリーズは全10幕ですが、本作の『ベック』は単体でも十分楽しめる作品で、他とは少し毛色も異なります。特にラストシーンはずっと記憶に残っており、全10幕のなかで最も印象の残るシーンの一つです。

5世紀のアイルランド。人間は数年前から侵攻してきた悪魔と闘いながら暮らしていた。主人公のベック達は、村に現れた謎の少年「かけ足」に導かれるままに旅に出る。紆余曲折を経て、悪魔の出入り口である「トンネル」を閉じることに旅の目的が定まる。ベック達を待ち受ける壮絶な運命とは……。

すでに日本語で読んだ児童文学を原書で再読することは、英語力の現在地を知るのにとても役立ちます。本作品は私が小学6年生くらいの時に読んでいた作品ですので、本書をすらすら読めると、ネイティブの10~12歳程度の力はあるということになります。ですが、結果としては、まだネイティブレベルの感覚には追い付いていない状態です。例えば、’legends of creatures’と唐突に出てきたときは「??」となりましたが、邦訳書を見るとなんて事はない「伝説の生き物たち」のことです。つまり、英語では世界観を捉えきれていないので、予想外の展開になったときに理解が追い付かないのです。また、リーディングスピードについて、今回は読み終えるのに2週間程度を要しています。子供のころは2~3日で一気に読み切った記憶があるので、まだまだ英文を読むこと自体、脳に負荷がかかっているのかなと思います。

■一文紹介

‐ Teeth and fangs bite into my flesh, every part of me at once. Nails dig in deep, burrowing through to my guts. Hands worn inside me and pull bits of my innards out, scraping at my skin from the inside. I’m being torn apart. The pain is unbearable. I lose control. My mouth shoots open. My senses dissolve. My brain goes wild. The last thing I hear, before madness and demons consume me, is the tunnel filing with my anguished, uncontrollable death howls. ‐(262頁)

"The Science of Speed The Art of the Sprint" - 洋書40冊目

■原書

"The Science of Speed The Art of the Sprint" Tom Tellez (Winning Dimensions Sports, LLC, 2020)

■評価

ジャンル:スポーツ

面白さ:★★★★☆

難易度:★☆☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 700~ 英検2級~

所要時間:4時間

■感想

1980~1990年代にかけて陸上界を席巻したスーパースター、カール・ルイスの指導者である、トム・テレツ氏の著作です。初心者でも分かりやすいように「走りの原則」を紹介しています。具体的なトレーニングの紹介こそ少ないものの、迷った時に立ち返るべき基本を示してくれている良書です。自分も本書の内容を念頭に普段のランニングに励もうと思います。意識すべきポイントはずばり、「地面に正しく力を伝えること」「姿勢・腕振り・ストライド」です。

■一文紹介

‐ ‘While not every athlete will be fast, every athlete can get faster.’ ‐(18頁)

"Brain Rules" 『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』- 洋書39冊目

■原書

"Brain Rules (Updated and Expanded): 12 Principles for Surviving and Thriving at Work, Home, and School" John Medina (Pear Press, 2014)

■翻訳版

『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』ジョン・メディナ 野中香方子 訳

■評価

ジャンル:科学

面白さ:★★★★☆

難易度:★★☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 800~ 英検準1級~

所要時間:10時間(ネイティブスピード:5時間程度)

■感想

脳科学を一般向けに分かりやすく説明している本です。ここ最近は茂木健一郎さんの本など、脳科学系の本を読むことが多かったので、内容もすんなり頭に入ってきました。英語や資格の勉強をするうえでのヒントもたくさん貰えました。ただ文字を追うような受身の勉強方法はやめて、視覚や聴覚、あるいは嗅覚まで五感をフルに活用する勉強方法を試してみようと思いました。脳科学の基礎はぜひとも小学校中学校くらいから教えるべきですね。それで人生が変わる子がいっぱいいるに違いありません。

"The Moon and Sixpence" 『月と六ペンス』- 洋書38冊目

■原書

"The Moon and Sixpence" W. Somerset Maugham (Vintage, 2009) ※作品の初版は1919年

■翻訳版

『月と六ペンス』ウィリアム・サマセット モーム 金原瑞人

■評価

ジャンル:文学

面白さ:★★★★☆

難易度:★★☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 800~ 英検準1級~

所要時間:8時間(ネイティブスピード:3時間程度)

■感想

冒頭部分は中々難しい文章ですが、それ以降は比較的読みやくストーリ自体も面白いので、洋書初心者にもおすすめです。個人的にはStricklandの内面をもう少し描いてほしかったという思いはあるものの、あくまで客観的な視点にこだわっているので、作者の趣旨とは外れるのかもしれません。

40代まで証券マンとして慎ましく働き、妻と子供を養っていた英国人Stricklandは、突如家族を捨ててパリに渡った。男がすべてを犠牲にして選んだ道とは—。こんな感じのお話です。無頼派な人間の物語が好きな人であれば絶対に楽しめる作品。あと太平洋の島に行きたくなります。

■一文紹介

‐ ‘I don’t think of the past. The only thing that matters is the everlasting present.’ ‐(76頁)

"Apollo 11: The Inside Story" - 洋書37冊目

■原書

"Apollo 11: The Inside Story" David Whitehouse (Icon Books, 2019)

■評価

ジャンル:児童文学

面白さ:★★★★☆

難易度:★★☆☆☆

レベル:TOEIC L&R 800~ 英検準1級~

所要時間:11時間(ネイティブスピード:5時間程度)

■感想

アポロ計画をクライマックスとする米ソ宇宙開発競争のノンフィクションです。科学技術が発展途上の時代に、命がけで宇宙を目指した飛行士の勇気には尊敬の念を抱きます。数々の英雄のなかでも最も好きなのが、人類史上初の宇宙飛行を成し遂げたユーリイ・ガガーリンです。1961年に小さなカプセルに入って一人で宇宙に行くなんて、考えただけでも恐ろしいですね。帰還方法も大気圏を抜けたら宇宙船から切り離されてパラシュートで着陸するというリスキーなものだったそうです…。初めて宇宙から地球を眺め、無事に帰還する。ガガーリンの心情は一般人には想像もできません。

進化には競争が不可欠であるということも改めて感じました。冷戦期という背景から、米ソは国家の優位を示すために莫大な資金を投入して宇宙開発を進めました。あの時代の宇宙開発の伸展は競争なしにはありえなかったのです。1970年代以降は宇宙開発の資金が減少し宇宙開発は下火になっています。あのイーロン・マスク氏も30年以上人類が月に行けていないのは馬鹿げていると考え、SpaceXを設立したそうです。

また、英雄たちの「その後」も興味深かったです。残念ながら宇宙飛行で偉業を成し遂げた人物のその後の人生は決して穏やかではないことが多かったそうです。もう一度宇宙を目指したかったがチャンスに恵まれなかったユーリイ・ガガーリンNASAから離れ小さな大学の教授になったニール・アームストロングアルコール依存症に苦しんだバズ・オルドリンなど…。宇宙飛行士も決して超人ではなく、それぞれに光と影を抱えていたことがよく分かりました。

■一文紹介

‐ That’s one small step for man. One giant leap for mankind. ‐(258頁)